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「お嬢様はご機嫌ナナメ」 レビュー。

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※ネタバレ注意

 

 上流階級の学校を舞台にし、そんな非現実の中での日常を描いて行く作品は数多あります。本作「お嬢様はご機嫌ナナメ」もそんな作品。ただ、ここに経済学を用いた、駆け引き的なものを絡めていくのが本作品の特徴でしょうか。

 しかしながら、この経済学は展開の味付けに過ぎないというか…個別シナリオで経済学を主軸とするのは実質的には名波、花ルートのみ。さらに言えば、妹ルートで焦点にあたるのは、主人公元の過去にあたる母親関連であり、経済学の部分を展開の主軸とし、決着するのは、結局、名波ルートのみとなります。このため、名波ルートのみが経済学をメインに扱っていたように思えます。

 シナリオを担当したライターさんの推奨する攻略順は名波→花の順番であり、これの理由として、序盤で明かされる情報の差異でしょうか。要は花ルートでは敵である鶴美が行動の意図…10億円が足りませんとか…を彼女の視点でその心情を通して説明してしまい、名波ルートでの展開のネタバレになっているからだと思います。

 共通ルートに限って言えば、経済学という設定は主軸となる展開ではあるのですが、結局個別ルートでは名波ルートだけしか絡まない。しかも、敵と正面からぶつかる名波ルートでさえ、結局は学園の出し物の延長線上でしかない。さらにいえば、この名波ルートは妹ルートの踏み台に過ぎない、と考えると、作品自体が経済学をメインにはしていないことがわかります。このため、拍子抜けというかなんというか…。この作品における経済学という設定は味付けに過ぎないという考え方なのだろうなと。

 ただ、一捻り入った設定として共通のシナリオ展開に一役買っていることや、主人公元の能力の高さを語るための道具として機能しているところが、この設定の良さ、でしょうか。上流階級の学園という非現実的な舞台であり、タイトル通りナナメ上なヒロインと、わりと取っ付きづらい要素を多く入れている本作。その取っ付きづらさを説明する主人公は好感を持てるように造形し、解決している。考え方がどちらかというとヒロイン達に比べて、読者に近い主人公を説明役とし、また、そんな主人公を単純に強く(肉体的にも、知略方面にも)設定し、そんな彼の視点で語られる本作は、単純に読んでいて気持ちが良い作品となりました。

 (とはいえ、経済学などに詳しい人ほど、この部分で説明される主人公の能力の高さに不信感を抱いてしまう可能性は高い。個人的には、コメディ色が全面に出ているこの作品では、設定の緻密さで話すような作品でもないと思うので、この設定はこの位の扱いが、らしいと言えばらしいですし、むしろちょうどよかったのかなと思います)

 さて、タイトルにもあるナナメ・・・お嬢様をナナメ上と評するだけあり、ヒロインであるお嬢様はどれもキャラクター造形がナナメ上というか・・・予想外の行動が多いヒロイン像で描かれました。

 タイトルにもなる名波お嬢様は主人公に「基本的に思いつきでのみ行動する」と評されるほどであり、そもそも予想など出来ない造形で。詩綾は表向き、引っ込み思案であり、物静かなお嬢様だと思われていましたが、親に見捨てられそうなほどの変態として扱われ・・・というか、親がヒロインを腐った蜜柑と評するほどに・・・意外性という面では個別ルートで一番それを出してきたヒロインに。透夏は主人公からすると、男友達のように見ていたのに、恋に恋する乙女という・・・主人公にとっては、意外な“女の子を強調した”面を見せていく。どのお嬢様も意外性のあるキャラクターとして描かれていることがわかると思います。

 しかし、こう考えると、本編でお嬢様ではない花、音羽は意外性を持たせず、そのままのヒロイン造形・・・予想を裏切らない形・・・でストレートに物語を紡いでいきました。

 公式で、「主人公にとって唯一の癒し」と評される花は、主人公の問題を唯一解決するヒロインに。兄好きであり、世話好きである花だからこそ、彼女のシナリオはこういった位置付けとなる・・・花というキャラクターをそのままに描いたシナリオだということがわかります。

 反転属性持ちの音羽は、行動がとにかく自分に素直(素直すぎて反感を買うことも多々ありますが、それだけストレートに感情を表すヒロインであることの証左とも言えますね)。惚れてからの行動が唐突に思えるのですが、音羽の家庭を見たとき、それはなんら唐突ではないということがわかります。親が家に居なく、妹弟がいるため、彼女自身は甘えられる環境にはない。そんな音羽は本来的には甘えたがり、だから好きだということを認める・・・主人公に甘えても良いと自分の中で肯定してしまえば、そこからはもう即効・・・それだけ甘えたがっていたことを端的に表しているとも言えるし、自覚したらもう速攻なのは彼女らしいといえば、らしい。純粋っていうか良くも悪くも真っ直ぐ。

 また、シナリオ的に見てもそんな素直さを反映していきます。

 この作品、前述の経済学を絡めたルートの他に、それを全く絡めないルートがあります。透夏と音羽ルートがこれ。アイドルになることを目指すルートのことなのですが・・・このルートでは、音羽の実力に裏打ちされた自信により、普段から地を出していく音羽と普段から自分を素直に出せず、鬱屈していた透夏が描かれていく。透夏から見ればこの音羽の姿は憧れになるし、そんな音羽に引っ張られていくシナリオにおいて、音羽と透夏の二人の相性が良く描かれるのは当然といえば当然。素直なヒロインをそのまま描いたルートとも言えるし、素直になれず、そこに憧れを抱いていた女の子が素直になる過程を描いたシナリオともいえ、その対比が非常に興味深い。

 設定的な捻りがあったとしても、その捻りをヒロインに適用するのか、適用せず、ストレートなまま、ヒロインを描くのか。どちらのヒロインが好みですか?と提示できることがこの作品のエロゲとしての強みでしょう。

 ヒロインを選び取ることの楽しさ。

 こういった選択を迫れる・・・ヒロインにキッチリとバリエーションを持たせた作品を創出するメーカーは良いですねぇ。


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