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『BradyonVeda -ブラディオンベーダ-』 レビュー。

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※ネタバレ注意




 本作「BradyonVeda」はシステムに用語解説があることからもわかるとおり、作品独自の設定を売りの一つとしている作品。ここに、最近では珍しいビジュアルノベル形式を採用し、物語の進行、世界観説明、戦闘シーンを膨大なテキストで表現します。全編に渡ってこの膨大なテキストにより長々と説明される世界観設定や戦闘シーンから、燃えゲーとしての楽しさよりも、物理学とかその辺りの設定説明を楽しめるかどうかが、この作品を好きになれるかどうかの境目となるかなと思います。


 「ネフィリム――正式名:神術兵装特務部隊。第三次東亜大戦中、たった十名で、数万の陸上部隊を壊滅させた実績を持つ実験歩兵部隊。彼らが扱う「神術」は、神の存在をこの世に顕示する・・・・・・まさに魔術と呼ぶに相応しい力だった。」(---BradyonVeda公式ページ、Storyより)


 この作品内で最強に設定されている(主人公と彼の昔の仲間を含むものだけが、この兵装を最大限に扱えるため、この世界における個人が持ち歩ける最強武装)特殊兵装を使用するネフィリム。主人公はこのネフィリムに所属していた過去があり、同じくネフィリムに所属していた昔の仲間の暴走を止めるべく、また、仇討ちのため、戦っていくことになる。シナリオの流れとしては復讐物と言ったところでしょうか。

 ただ、この作品、最初に提示された復讐物としての側面は総括となるエピローグの前に終わってしまう。

 この作品、カエデ、紫音、エピローグと分岐します。分岐とは言っても、おまけの表示で、カエデルートを6~8章、紫音ルートを9~11章、エピローグを12~13章としていることからもわかるとおり、攻略順に規定があり、全体を通しての物語となっています。ただ、このエピローグを前にして・・・個別ルートの段階で復讐は完遂している…もっと言えば、カエデルートの時点で復讐まで描かれてしまっています。

 そのため、紫音ルート、エピローグはその先を描かなければならなくなる。

 カエデ、紫音はどちらのルートも直人を亡くしており、どちらもヒロインが一人でエピローグへの目的を目指す姿を描く。作品自体、最後はエピローグに帰結・・・カエデ、紫音ルート後の世界を踏まえ、目的を終え、その後、一人になった直人の姿を・・・人間がこの作品でいうところの「全ての量子脳が夢見た究極の状態へと進化する」を目指すまでを描いていく。つまり、本作は復讐物ではなく、その先・・・人間がこの作品で言うところの進化への可能性に向かっていくその姿自体を描くのが本作となるわけです。

 それは目指したコンセプトから本作がずれていることからもわかると思います。


 「コンセプトはそんな重厚な世界観。そしてそれを盛り上げる迫力のバトル」(---BradyonVeda公式ページ、Conceptより)


 戦闘と重厚な世界観の両立を目指した作品なのですが、ただ、ライターが書きたかったのは戦闘自体よりも、SF的な世界観自体ではないのか?と思えてしまうほど、この世界観説明に終始します。専門用語で専門用語を説明なんてこの作品の中ではよくあることだし、戦闘シーンはその延長線上であり、日常シーンなどはどこへやら・・・。

 最たる例としては5章がそれに当たるかと。この5章、「BradyonVeda」の根幹設定を説明する章となるのですが、説明のために戦闘シーンを削ってしまうという手法を取る。訓練兵としてそこで生活する主人公たちが最終試験で戦い、実力を見せることが目的・・・この5章で行ってきた訓練の成果を見せるシーンであるはず・・・なのですが、その戦闘シーンすら、見事にカットされている。説明を戦闘のために使う作品は数あれど、世界観説明のために戦闘シーンを削ってしまうという描き方を見せた本作では、如何に世界観を重要視しているのかがわかると思います。

 ただ、結局、これだけの世界観説明を入れながら、この作品、エピローグのED曲の後、戦いがまだ終わっていない・・・敵がいることを示唆するし、その敵に関係した設定は説明はされていないと色々と未消化な部分があるのですが・・・それがラストに活きる。


 「BradyonVeda(光速以下で活動する物質生命体の伝承)として、全ての宇宙・・・・・・全ての事象領域の記憶として刻まれるだろう。可能性―――そんなことは、誰もがわかっている。少女たちの迎える明日は、まだ誰もみたことがないのだ。ならば、真っ白で広大なキャンバスに『光』というパステルを使ってどんな絵を描くのかは、子供たち次第ということだ。」(---BradyonVedaより)


 非現実の中でのシナリオを描いた本作は物語のラストで、ようやく現実というスタートにつく。その現実はBRADYONVEDA・・・物語自体が人間はより上の次元にたどり着けるのだという可能性を示唆したまま。長々と説明された世界観は可能性の裏付けとして存在し、それゆえに膨大にしなければならなかった。これがあるからこそ、このラストシーンはここまで映え、読後の良さを奏でたのだと。

 世界観や設定、戦闘シーンの説明に追われ、心情描写が薄いのは残念ですが、膨大な設定はラストシーンを強めるものとして、また、だからこそ未消化部分に意味合いが出てきた作品。膨大な世界観設定を読む楽しさや細かな説明の戦闘描写自体を楽しんでも良い。ただ、それらに裏打ちされた、ラストシーンこそが、この作品本来の味なんじゃないかなと思います。


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