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「雪桜~ゆきざくら~」 レビュー。

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※ネタバレ注意

 雪国での生活を描いた『雪桜~ゆきざくら~』は多少の不思議設定はあるにせよ、地に足がついた物語を展開する。掛け合いのテンポもよく、雪国での学園生活を楽しく過ごせる。しかし、シナリオはヒロインの悩みなどがわりと深刻にならず、あっさりと解決する。平坦で読みやすい。よく言えば王道。悪く言うと驚きがない。

 これは別にこの作品が10年近く前の古い作品だからというわけではないだろう。

 同年代の作品を見渡すと『CROSS†CHANNEL』、『沙耶の唄』、『こなたよりかなたまで』、『ゆきうた』。軽く挙げただけでも、シナリオに重きを置き、心理描写を深く描いた作品ばかりだ。そんな時期なので10年前というのは関係ない。恐らく製作者側は意図してこのようにストーリー展開を解りやすく、心理描写を深めず作ったのだろう。

一面の銀世界。
凍てつくような寒さの中で、だけど、人の心の温かさがより
深く感じられる場所。

(雪桜~ゆきざくら~:マニュアル「雪桜」について より)

 製作者が目指したのは、雰囲気を重視した作品。そのおかげかシナリオなどに気を取られることなく、雪国での彼らとの生活を楽しめ、その場の雰囲気をより深く感じられる。雰囲気ゲーのお手本と言ってもいい作品として成功している。

 ただ、心理描写が削られているせいで、キャラクターがテンプレというか、いやに記号的というか、そのように感じてしまうことが多かったのは残念だった。しかし、そんな中でも沙紀というキャラクターは違った。

 『雪桜~ゆきざくら~』ではパッケージ絵やOPでの中心にいる美咲がメインヒロインかと思いきや、従妹である沙紀の扱いが一番良い。こずえルートもしくは沙紀自身のルート以外では主人公&攻略ヒロインを支え続けるまたは相談に乗るスタンスを取り続ける。美咲はこずえルートでこずえと主人公の仲に対し、ヒステリー起こしただけなのにこの扱いの差は決定的だと思う。

 もう一つ優位性を証明するのは幼いころの記憶。この作品では幼いころの記憶が何度か蘇る。もうシルエットしか思い出せない女の子の記憶。話の根底にあたるだろうこの女の子。普通であったら、この女の子は美咲というのが定番だろう。しかし、シナリオによって誰であるのかが変わる。だから、根底のシナリオにおける立ち位置としても沙紀は美咲に劣らない。

 沙紀の話に目を向けてみよう。彼女の話自体はほかのルートと大した差異はない。けれども、沙紀は従妹という設定上、同じ家に住んでいるため作品内で一緒に居る時間が長い。他のルートであっても主人公の相談役となり、印象良く描かれている。このおかげか愛着がわき、ただ安定感あるだけのシナリオがとにかく萌えるシナリオに転じる。キャラクターの良さを出し、それを全面に押し出せば良シナリオになる好例だろう。

 キャラクターの良さもさることながら、根幹の設定、作品全体のシナリオにおける扱いが優遇されている沙紀。この作品が「沙紀ゲー」と感想でよく目にするのはこういった理由からなのだろうなと納得できた。

 妙に長めでシナリオに比重を置いた作品をプレイすることが最近は連続していたので、箸休めにちょうどよかった。10年近く前の作品だが、懐かしくほっとするような雪国の世界、そして何より沙紀を筆頭に愉快な登場人物に癒された。

 どうやら冬に再度プレイしたい作品が増えてしまったようだ。

雑記。
 おまけがちょっとよくわからない。過去作の登場キャラ、くらきを使者とし、雪桜が主人公に枝を渡す小話。短すぎて何を意図しているのか読み取れなかった。

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