スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『つよきす NEXT』 レビュー。

c771492package.jpg

※ネタバレ注意

 
 今作、「つよきすNEXT」は「つよきすシリーズ」の名を冠し、「つよきす」本編から数年後のシナリオ。ただ、前作を未プレイであってもある程度は楽しめるようになっています。それは登場人物が一新…前作から出番があるのはスバル、きぬ、乙女程度であり、しかも、きぬ以外は名前が明かされず、出番がほんの少し…辺りからもわかると思います。ただ、ある程度と言ったのは、前作が未プレイでも楽しめるとは思いますが、 今作キャラクターとの関連性…前作キャラクターを「伝説世代」とし、前作キャラクターと今作キャラクターが血縁関係にあたるなど…を見せ、スバルと乙女さんは山場での登場であるので、前作が好きであるとより一層楽しめると思ったからです。つよきす関連を未プレイであるのなら、前作のキャラクターの関係性なり、特質なりを把握しておく、くらいはしておいた方がいいかなと思います。

 前作と大きく異なった点はヒロインと主人公の性質を逆転させている所でしょうか。前作の主人公であった対馬レオはその場のテンションに流されるキャラクターであり、その血縁にあたる今作のヒロイン心秤もそのような造形…普段はクールぶっていて要所で熱い…そんなヒロインが描かれました。そして主人公はというと…前作ヒロインの一人であり、なおかつ本作で唯一ちゃんと顔出しまであった蟹沢きぬの血縁…そのため、今作の主人公さなぎはヒロイン並に“強気”な造形で描かれることになりました。かにの造形に似ているためか、小物感…負けた相手には小学生並の煽りを行ったり、自身の身長の無さから敵対心を持ったり…が凄いことになっているんですが、それが掛け合いのスパイスとなっていく。要所で熱いヒロインと全体を通して純粋に面白い主人公。意外とこれは成功だったのではないかと思います。

 このシリーズらしさは何よりも掛け合いの良さだと思うのですが、今作もその例に漏れません。

 さかき氏の作品全般に言えることだと思うのですが、彼のテキストは地の文が少ない。そのため、主人公のいない視点であると、心理描写などはほとんどなく…キャラクターの説明が行われない…そのため、どういうキャラクターなのかよくわからなくなってしまうのですが、グラフィックス、ボイスでその点を補う。視覚的に、また、台詞でもわかりやすく、キャラクター造形を行います。テキスト単体で読むとわかりづらいし、面白くないのですが、ボイス、グラフィックスを組み合わせることを想定した・・・ゲームテキストとしてはかなりのレベルで成り立たせている。そのため、恐ろしいまでに登場人物が生き生きしてくるんですよね。

 「強気っ娘恋愛アドベンチャー」を名乗るシリーズの作品だけあって、今作も強気なヒロインが描かれました。

 ただ、ヒロインのその強気な面だけを押すのではなく、ヒロインの弱みを見せてきます。はかりは身体的な弱さを前面に押し出しつつも、それゆえに精神的な強さが、チェリは過去の弱い姿…周囲を拒絶する姿…その対比で現在の明るさ、その強さが。全体を通して強く描かれた音子は風邪関連のイベントで、子羽は兄関連の落ち込む姿から女性的なかわいさを。強気なヒロインとそのヒロインの弱さを同時に描く、この緩急が特色となり…ダメな部分を押し出すからこそ、彼女たちの強気な部分を強調し、もしくは普段は強気キャラクター描写に女性的な弱さを描くからこそ、女性的なかわいさが強調される…これがヒロインの魅力に繋がっていきました。

 それはキャラクター個々の性質だけには留まらず、作品の構成自体にも適用されています。

 物語は5つのルートで構成され、前述のはかり、チェリ、音子、子羽のルートとこれらを攻略後にTRUEとして解放される澄香、澄香ルートの後日談があります。この澄香というキャラクターがそもそも強気ではない。「自身で選び取ることができない弱い人間」とはかりが評するほど、弱気なヒロインが描かれることとなりました。弱気から強気へと澄香がシフトしていく…それが澄香シナリオとなる。強気なヒロインだけだと強弱の基準がよくわからなくなってしまう。そのための弱いキャラクターであり、全ヒロインを見渡した時、ヒロインとして異質な存在でもある。このキャラクターをヒロインとするのであれば、このルートがこの作品におけるTRUE…隠し…という位置づけにされているのも納得がいきますし、このルートがあったからこそ、他のヒロイン全員の“強気”が強調されることとなりました。

 そうして描かれるそんな強気っ娘たちとの日常。この作品における日常が面白いのは生き生きした登場人物が織りなすからでしょう。ところどころ、ある程度は知名度が高めのパロディを交えつつ、作品自体の取っ付きやすさを魅せますが、それをメインとしない。あくまでもスパイスに過ぎないという考え方であり、この作品の本来的な魅力はキャラクターにあると思うのです。

 この辺りは個別シナリオですら日常描写に特化していることからもわかると思います。個別シナリオは日常の延長線上に過ぎないんですよね。チェリなんてそもそもヒロインの問題は終わった物…思い出話として展開されるし、音子、心秤は山場となるのが学校のイベント程度、子羽ルートは兄との再会など山場となりそうな部分はあるのですが、それ以外はほとんど日常を描いているし、その山場ですら、言葉で語らず一枚絵で終わらせている(語らないからこそ、ラストシーンの後がどうなったのか…そんな想像により映える良いシーンだとは思いますが)。TRUE以外に物語性なんてあってないようなもの。いちゃいちゃラブラブしているだけ。

 (物語性よりも日常を重視している点は選択肢にも表れていると思います。掛け合い中の選択肢はルートを決定付けるものとはならない…OP後にキャラクターを選ぶ選択肢のみが進行ルートを決定づける。掛け合い中における選択肢はこの選択肢を選んだらどんな掛け合いを見られるのだろうか?といった日常を描くためだけに存在しているのです)

 つまり、物語で引っ張るのではなく、明らかにキャラクターで引っ張っている。シナリオ自体は基本的にキャラクターの日常を描いている“だけ”…物語自体は奇をてらわないし、予定調和でさえある…それでもキャラクターの魅力だけでこれほど引っ張れる作品は珍しく、それがこの作品の特色となるし、それが面白い。

 エロゲに物語性はなくてもいいんだ…そう思わせられてしまうほど、キャラクターが魅力的な作品です。


レビュー一覧へ
関連記事
スポンサーサイト
5:

プロローグのド序盤のカニ家表札にスバルの後ろ頭が描かれてますね…

2013.12.31 08:35 松笠の呂布 #am7qltcM URL[EDIT]
6:Re: タイトルなし

> プロローグのド序盤のカニ家表札にスバルの後ろ頭が描かれてますね…

あれはカニの絵だと思っていました…。

2013.12.31 11:07 カナカナ #- URL[EDIT]
7:

普通に見るとカニなんでしょうが最初見た時スバルにしか見えませんでした。左ハサミがスバルテールで右ハサミが顔輪郭諸々…

2014.01.01 03:49 松笠の呂布 #2ukxmIo6 URL[EDIT]
8:Re: タイトルなし

> 普通に見るとカニなんでしょうが最初見た時スバルにしか見えませんでした。左ハサミがスバルテールで右ハサミが顔輪郭諸々…

確かにそう言われると見えますね。そう思ってしまうほど、つよきすNEXT自体に既存作品のネタがあるってことですか(ぼくは大して把握しきれなかった人間です)。

2014.01.01 09:00 カナカナ #- URL[EDIT]
9:No title

蟹家表札って大きく蟹って書かれてるあれですか? 墨で書いたような奴ですか

2014.01.04 02:43 #- URL[EDIT]
10:Re: No title

> 蟹家表札って大きく蟹って書かれてるあれですか? 墨で書いたような奴ですか

多分、それの話じゃないかなと思います。
まぁ、無印はだいぶ前なので描写があるのかどうか忘れてしまいましたが、三学期の方でも表札には蟹の絵であると言われているので、蟹の認識が強いですが…。

2014.01.04 03:19 カナカナ #- URL[EDIT]

管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。