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『Electro Arms』 レビュー。

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※ネタバレ注意

 「ElectroArms」はエロゲではあまり使われていない舞台・・・仮想現実・・・ゲーム中での世界を採用しています。わりとこういう設定自体はエロゲ以外のメディアでは、手垢の付いたジャンル。ぼくが知っている範囲ですら、「.hackシリーズ」(---CyberConnect2)や「ソードアート・オンライン」(---電撃文庫)、「アクセル・ワールド」(---電撃文庫)、「HUNTER×HUNTER(グリードアイランド編)」(---集英社)、「サマーウォーズ」(---角川)など、ある程度は採用されている設定です。

 しかし、ことエロゲに関して言えばあまり採用例を見たことがない。前述の5作品がアニメ化をするほど受けていると考えると、この題材がエロゲでそれほど扱われていないことに疑問が出るほど(少なくともぼくが知る範囲では、ですが・・・。仮想現実物で記憶に残っているエロゲが3本ほどありますが、その“仮想現実である”設定自体がネタバレ・・・物語の核心として使われる類の作品であり、最初に世界観として明示されているものではないので、ここでは除外しておきます。また、ネタバレにもなると思うので、タイトルも伏せておきます)。エロゲとしては新しい物への挑戦となり、新鮮ではありますが、他のメディアを見渡すとわりと好感が持たれやすそうな設定。しかも、仮想に入り込むのではなく、現実に仮想を持ってくるというところに設定的な捻りがあります。ただ、「EA」におけるこの設定はヒロインと主人公の信条を描くために存在するためだけに存在しています。そのため、それを描いたシナリオが最後の最後で見事なまでに際立ちます。

 演出は視点となるキャラクターの台詞とモノローグ以外は吹き出しにするため、誰が喋っているのか感覚的にわかりやすく。そして戦闘は一枚絵のグラフィックスによるカットイン演出や銃や剣などの攻撃エフェクト。ウィッチィズガーデン(---ういんどみる)よりは動きが少ないですが、立ち絵に「E-mote」(---M2)を採用し、キャラクターに動きが出るため、立体的に見え楽しい。作品全体が“見て”楽しませることに重点を置かれていることがわかります(ちょっと重点を起きすぎて、ゲームの動作が全体的に重くなってしまったのがキズですが・・・動作はメーカー名を体現して欲しいものです)。

 システム、設定だけ切り取ってみても、目新しいけれど好感を持ちやすそうな設定に、視覚で楽しませる演出が加味された娯楽性の高い作品と言っていいと思います。


 「人生ってのはクソゲーだ。だったら、精一杯そいつを愉しむにはどうしたらいい?自分の手で、自分の意思で、面白おかしくするしかねえだろ」(---桐原零示)


 本作の主人公桐原零示は人生をクソゲーと言い切る・・・斜に構えて批判します。しかし、批判したままで終わらないんですよね。批判で終わらせるだけなら簡単だと思います。その先・・・代替案と言いますか・・・それを定め、現実にしていく。これってかなり難しいと思うんですよ。この物語はそんな難しいと思えることをやってのけていく彼の姿を描くからこそ、彼の行動に痛快さを感じるんです。

 また、主人公のゲームに対しての取り組みから、好感を持てるよう造形しているのがわかります。斜に構えたキャラクターではありますが、状況への適応と言いますか、情報収集を怠らず、他人に対しても真摯に向き合う。技名のダサささえ、ゲーム世界であることを強く意識させ、しかも、その技名を叫ぶのに照れを感じさせない。ゲームへの真剣な取り組み・・・楽しもうという気概が見て取れます。そしてこれが主人公の信条とかみ合うため、好感が持てる。 そんな好感が持てる主人公像と彼の行動が前述の通り痛快であるがゆえに、この作品は楽しい。

 この物語において主人公は最強の存在です。そもそも全ての戦いにおいて負けるといったことがありません。全編に渡って描かれるのはバトルですけど、そのバトルはどこまで行っても、主人公の信条の強さを描写するためにあります。

 そんな彼の信条とヒロインの目的がかみ合うことによって紡がれるのが個別ルート。


 「人生を踏み躙る理不尽から自由になって羽ばたく為に」(---滝沢さつき)

 
 さつきのルートはEAの設定についての説明はなく終わってしまう。けれど、これでいい。彼女の目的は家業に対する不当な圧力・・・理不尽・・・からの脱却です。そして主人公の信条は人生が面白く・・・平凡であってはならない。となると、さつきの問題さえ解決してしまえば良いのであり、残りのEA関連の問題などは解決しきる・・・終わってしまってはダメなんです。だからこそ、ラストはまだまだ続くことを示唆するような形となり、それがこのルートの味となる。


 「人が人として守るべき規範、その正しき道を示すために」(---阿笠忍)


 忍ルートは他の2ルートとは決着のつけ方が異なる。ラストバトルはゲーム世界ではなく、現実のガンアクション・・・一歩間違えば死に至る戦い。忍自体の目的が人としての規範を守ることと、その正しさを示すこと。キャラクター造形もそのようになっている。死に至る戦いではありますが、最後の最後で主人公が殺しをしない。戦争・・・生と死の二元論になってしまう物・・・の否定。翻って、零示の信条が規範を守ることの肯定を示していくことになる。だからこそ、忍とかみ合うし、それを描くラストバトルでの不殺のシーンが映える。


 「最愛の恋人と最高の死闘を謳う為に」(---レオナ・K・バーンズ)


 レオナは最強であるがゆえに孤独・・・対等な存在の欠如・・・な存在であり、その対等な存在を渇望していることは本編の序盤でも描かれます。物語が描くは主人公が彼女と対等な立場に着くまで。最後のレオナVS零示なんてまさにその象徴の最たるもので、ゲームだからこそ、生死とは関係ないからこそ本気になれると戦う彼らの姿は本当に楽しそうであり、また、ここに燃えを感じてしまう。


 「さあ、ゲームを始めましょう」(---さつき&忍&レオナ)


 ゲーム世界という設定はこれらヒロインの目的と主人公の信条を描くためだけにあり、展開や主人公設定すら無駄がない。そのため、信条を貫き通した彼女たちのシナリオはどれもより一層際立つものとなりました。

 演出、設定など挑戦的な作品であるにも関わらず、物語自体は奇をてらわない。普遍的に好感が取れるようにし、各ルートで描くものは変われども信条はぶれさせず、共通から個別まで一貫した主人公。ヒロイン側の問題を元にした無駄のない展開。・・・良いなと思います。こんな描き方だからこそ、登場人物の行動そのものに燃えを感じることができたのだと。

 「主人公ゲー」は突き詰めればこれほど気持ちの良いものになる。それを教えてくれた作品です。

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