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『辻堂さんのバージンロード』 レビュー。

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※ネタバレ注意

 『辻堂さん』の主人公・・・大って『つよきす』の主人公に比べたら、我が強いというか、頑固というか・・・そんな気がする。その場のテンション・・・わりかし周りに流される『つよきす』のレオ。対して、不良には一切ならず、一般人としての視点を貫き続け、あまつさえ対立に介入してくる『辻堂さん』の大。比較してみると、大って頑固だよなぁと常々思う。

 『つよきす』と『辻堂さん』どちらの作品もほとんど主人公のモノローグで日常を語って行く構成。だから、主人公の主観が受け入れられない場合・・・面白くない。こういう作品でよくこんな頑固な奴を主人公に据えてきたなぁ・・・。わりとユーザー層を狭める危険性を孕むのでは・・。実際、『純愛ロード』の方では主人公に関して、不満を抱く感想が多く見えたことからも結構な綱渡りだったのだろう。

 それでも頑固さを持った主人公を描き続ける。

 実際、これは登場人物を見渡したとき、必要な事だというのはわかる。地の文はほぼ主人公のモノローグで描かれる物語。こういう場合、視点となる語り手の立ち位置はヒロイン達と違うというのは手法の一つ。ヒロイン達は不良。つまりどこまでも彼は一般人代表でないといけない。また、そもそも多くの人は不良というものがよくわからない。というか、現実世界に則した不良ならまだしも『辻堂さん』に出てくる人間を軽く吹き飛ばすような不良・・・実在するわけない、わかるはずがない。それを説明するためには、視点には一般人というある程度読者に近いとされる主人公を置く必要がある。だから主人公は頑固なまでに一般人を貫かないといけない。一般人代表だけれど、不良というものに憧れを抱く大という主人公は必要なのだろう。

 とは言っても、『純愛ロード』でユーザー受けが悪かったのか、今作『バージンロード』で彼は変わった。若干、対立がマイルドというか、ヒロインサイドの不良を理解しようとする姿勢が見て取れる。喧嘩を止めるとしても、落としどころを見極め、止めるタイミングはきっちり考える・・・。否定ではなくて、理解しようとするという姿勢を見せる。その最たる例がよい子ルートでの不良の喧嘩を行う場面。不良はよくわからない、暴力は良くない、そんなものになるものではないという考え方は捨てられない。その反面、愛さんに憧れる、彼女たちの世界を好きな気持ち。この理由を知りたい一心。考えは対立していても、理解しようとする姿勢を描くことで、不良との線引きはぶれさせず描いてきた。そんな主人公の目線を通し、描かれる「愛さん」を筆頭とした登場人物。前作より一層、魅力的に思えてくる。

 この作品って、主人公がいない視点だと、心理描写は当然ほとんどない。

 たまに独り言をいう程度である。というか、主人公が居ても、地の文は少ない。心理描写を無くす・・・ということはキャラクターの説明をしないということ。どういうキャラクターなのかよくわからなくなってしまう。しかし、それは小説の話。これはゲームである。この作品、登場人物は一目で見ればわかるとおり、アクが強い。視覚的に、また、台詞でもわかりやすいキャラクター造形で構築する。

 アクの強いキャラクターデザイン、性格付け、ボイス。これらを考慮した台詞回し。テキスト単体で読むとわかりづらいし、面白くない。けれど、ボイス、グラフィックスを組み合わせることを想定した・・・ゲームテキストとしてはかなりのレベルで成り立たっている。そしてこれら全てが組み合わさるということは・・・恐ろしいまでに登場人物が生き生きしてくるんですよね・・・。

 そうして描かれる日常や戦闘。この作品における日常が面白いのって生き生きした登場人物が織りなすから。確かに普通の日常物とは違って戦闘を描きはする。けれどもあくまでもスパイスに過ぎない。本当の魅力は登場人物にある。

 それでもラストは戦闘で締めくくる。

 この作品はそこまで戦闘描写が凄いわけではない。地の文が薄いせいで、演出のみで戦いを表現することになる。確かに演出は強化されていて、カットイン、砂埃、拳の描写と頑張っているし、楽しめはする。けれども、それだけだと本職の燃えゲーに比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまう。戦闘って非日常。特にこの作品のように人が吹っ飛ぶことが多い戦闘をそもそも体験する人などいないだろう。そんな下地がない状態で、このような戦闘からは普通、実感がわくはずがない。コメディとしてならともかくラストではシリアスとして描いているので、実感は必要だと思う。実感がわかないのならどうするか・・・共感を呼び起すしかない。ただ、共感を起こすのにわかりやすいやり方としたら、詠み手との距離を縮める、心理描写を深める作業が必要になる・・・けれど、この作品でそれは無理である。

 では、シリアスシーンとして描かれたこの作品の戦闘が面白くないのか・・・と言われるとそうではない。この作品で戦闘というのは、生き生きとしたキャラクターたちが好き勝手に振る舞い、暴れまわること。主人公の置き方、キャラクターの魅せ方、とにかくキャラクターを魅力的に映るように構築されたこの作品・・・。そんな作品のキャラクターが言い分をどこまでも押し通す・・・「つっぱる」行動。ここに共感が起き、心打たれるし、燃えを感じてしまう。『辻堂さんのバージンロード』の戦闘が面白い理由はそこにある。

 『真剣で私に恋しなさい!!』をプレイして、ぼくはタカヒロ氏に疑問を抱いた。『姉ちゃんとしようよっ!』、『姉ちゃんとしようよっ!2』、『つよきす』のように日常描写を主体とした作品から、妙に戦闘を盛り込んだ『真剣で私に恋しなさい!!』・・・日常は前述の3作品同様、楽しませてもらった。しかし、描写の浅い立ち絵のみの戦闘がどうにも楽しめなかった。なぜこんな戦闘を1ルートまるまる入れるのだろうか・・・。今回の『辻堂さん』・・・ライターではなく企画側からの参加ではあるが・・・タカヒロ氏の目指すものが見えた気がする。

 何故、彼が執拗に戦闘を入れるのか。それはキャラクターを描くため。戦闘自体に燃えさせるのではなく、キャラクターの「つっぱる」行動、振る舞い、そこに燃えを感じさせる。なんというか、キャラクターが自信を曝け出し暴れまわる戦闘は、キャラクター主導の物語を描く本作において、キャラクターの魅力をより引き出すために、効果的な方法なんですね・・・。この描き方は『辻堂さん』で燃えを感じた自分から見ると正解に感じた。萌えだけではなく燃えも引き出すこと・・・結局、彼はキャラクターの魅力を引き出すことにどこまでも注力する人なのだなぁ・・・。

 そしてこれを実現するテキストを描くさかき氏は凄いし、キャラクターのかっこよさと可愛さを両立させる表情豊かなグラフィックスを描く、みこしまつり氏もこれまた凄い。もちろん、甘えるシーンや啖呵を切るシーンを演じ分ける声優陣も半端ない。当然、戦闘を盛り上げるための演出やストレスフリーなシステムの構築もこのゲームでは必須。

 企画、ライターだけでは絶対に完成しない。『みなとカーニバル』というブランドが、エロゲという総合エンターテイメントとして、高いレベルで完成させた『不良娘といちゃつくADV』

 こういうエロゲ、好きなんですよね・・・。


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