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『ゴールデンマリッジ』 レビュー。

Golden Marriage

※ネタバレ注意



 「ensemble」最新作「ゴールデンマリッジ」は、上流階級のコミュニティを舞台にし、そんな非現実の中での日常をコメディタッチで描きます。物語は共通での5話と個別での2話に別けられ、全7話で構成。ある程度、メインの話を展開させつつ、各話の最後に予告を挟むことからもわかるように、1話で完結するイベントを盛り込んでいます。コメディ色の強いテキスト。緩急の付いた読み進め易いシナリオ展開。うん、面白いです。相変わらず、こういった舞台を扱わせるとこのメーカーは安心感がありますね。

 この作品、共通は1話ごとに各ヒロインにスポットを当てて話を展開・・・キャラクター紹介を兼ねています。つまり、共通が全5話ということは、ヒロインの説明を仕切ったところで、ヒロインと主人公が相思相愛になるわけでもない状態で、共通ルートが終わるのです。普通の純愛物のエロゲでしたら、残りの個別ルートで、そこからは恋仲になるまでを描いていくと思います。ところがこの作品、その過程をすっ飛ばして、相思相愛になる前の、5話でヒロインと恋仲になります。


 「もしも立花本家を渚に継がせることになったならば、それは必ずパートナーがいる状態・・・・・・つまり、心から信頼できる人生の共有者、結婚相手を見つけてからにして欲しい、と」(---エルヴィラ・リーフェンシュタール.『Golden Marriage』)


 つまり、主人公がヒロインと恋仲になる理由は、資産家の跡継ぎになるために必要だから、という意味合いが強い。打算で始まる恋愛の形とでも言えば良いのでしょうか。そもそも、ヒロインは別として、付き合う段階でヒロインに主人公が惚れているルートってありましたか?なかったはずです。全ルートを見渡して、付き合う段階で主人公はヒロインに惚れるまでは至らない。そのため、主人公がヒロインに惚れるのが個別ルートであり、付き合ってから、セカンドOPから、EDにかけてが本作の恋愛物としての本番となるわけです。どう主人公がヒロインに惚れていくのか?そんな過程を楽しむのが個別ルートというわけです。

 その過程は紫子ルートがわかりやすい。主人公自身、自分のヒロインに対する衝動への戸惑い、照れというか、初々しさというか・・・惚れる過程をきっちり描いていきます。ストーリー的にも、過程をすっ飛ばして、婚約まで至ったのだから、恋人らしいことをしていこう・・・そんな丁寧さがあります。


 「そんなことないですよ! 乙女なら誰しも恋愛には憧れるもの!」(---天谷 玲)
 「財政援助目的で結婚しようと言ってきたお人とは思えない発言だね」(---立花 渚)


 それにしても、この打算から始まる恋愛設定のおかげか、面白いヒロイン像を開拓したように思えますね。特に玲。彼女は主人公が「棘はあってもそれを隠そうとしない、裏のない性格」と評すほど、そのストレートな物言いとその自信が気持ち良いヒロインです。


 「そしたら、あたし――絶対にあなたのこと幸せにしてあげるから!」(---天谷 玲.『Golden Marriage』)


 これを言い切れるヒロインの格好良さ。シナリオは、そんな彼女が実力で夢を叶えていく姿を描いているため、単純に気持ちが良いです。プレイ当初、この作品は、主人公の持つ財閥後継者の立場を狙うヒロインと、そこから逃げる主人公って構図を取って行くシナリオになるのだろうなと思ったんです。玲こそ、その体現みたいなヒロインだったんですけど、実際のところヒロインの中で、その立場をメインとして狙うヒロインってそんなに居ない。

 玲は主人公の境遇、立場を見ているだけであって、素の主人公を見ているのではない。これに対照的なのが透子。公式やパッケージで中央に居る辺り、扱いが別な幼馴染である彼女は主人公の立場にはあきらかに興味ない。ヒロインの中で、素のままの主人公を最も見ているのが彼女であり、特別な扱いを受けているのも納得が行くという物です。

 結婚を題材にしているだけあって、「家族」が強調されて描かれましたね。そもそもこの作品、主人公からヒロインを含めて、まともに家族構成をし、家族が機能しているキャラクターっていなかったはずです。産みの親を亡くしている主人公は勿論の事、瑠璃、透子は家族関係の悪化、玲は両親が超放任主義、花純は一家離散、紫子は両親がともに忙しくほとんど一緒にいることができない。そして、シナリオ自体は(超放任主義の玲を除いて)家族がまともに機能していない彼らが、家族と関係を改善していくまでを描いている。この作品では、結婚は・・・幸せは・・・互いの親に認められて、周りから祝福されて、ようやっと成すものとして描かれている。そんなこだわりもこの作品の楽しみの一つなのでしょう。ルートによっては登場キャラクターが固定されてしまって、共通の賑やかさが少なくなってしまったのは、ちと残念に思いましたが、家族は、最初は二人から始まる物であると考えると、家族を強調したこの作品では、これはこれで良いのではと思えてしまいますね。

 そして、そんなヒロイン達に主人公が合わせていくというか、彼女たちに夢を与えていく姿が印象的です。例えば、花純シナリオでは、花純の夢のため、主人公が跡継ぎを辞める選択肢を取る。主人公が彼女の夢に合わせる形になる。最初の目的は後継者になるための婚約だったはずなのに、目的が見事にすり替わっている。キャラクターを多様に描くまでは、どの作品でも出来るのですが、その行動までも、シナリオ上で、キャラクターごとに使い分けて描けるかと言えば別です。おじょナナの感想でも言いましたけど、ヒロインを選び取ることの楽しさというか・・・こういった選択を迫れる・・・ヒロインにキッチリとバリエーションを持たせた作品を創出するメーカーは良いですねぇ。

 (ただ、追加パッチのマリーカルートが、エロシーンが一回だけ、かつ夢オチという点だけはどうにも許容しがたいものが・・・。このメーカーは大好きなのですが、こういったFD的な要素にも力を入れて欲しいなと思ってしまうのは欲張りなのでしょうか・・・)。

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