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『大図書館の羊飼い』 レビュー。

大図書館の羊飼い


※ネタバレ注意



 これだけ日常を描いているだけなのに、楽しいというのは、Augustの強みですね。本作「大図書館の羊飼い」の日常シーンはあくまでも登場人物の行動だけを示し、心情をほとんど語らせない。心情を全て語ってしまったら、ヒロインの心情を想像する部分・・・読む楽しみが欠けてしまうのですが、本作は語らせないため(AnotherViewは例外)、女性キャラクターの内面を、外面や行動などから、男性の理想的な・・・もしくは男性好みであると想像させるように描くこととなりました。演出はかなり凝っていて、挙げればきりがないのですが、カットイン、視点変更、吐息、光の使い方などなどを用いて、キャラクターの心情が見て想像しやすい。

 例外としてAnoterView・・・別のキャラクター視点で「心情を語らせる」が挙げられると思いますが、こちらはあらかじめ要所で心情を語らせ、行動を予測できるようにする。展開の補助として、唐突さを感じさせない・・・あくまで、要所での語りであるため、シナリオ展開に安心感を出させるためだけにあります。

 行動がわかりやすいテキスト、演出、けれども、基本的には心情を語らせない。この緩急がヒロインの内面を良い方向に、ヒロインの内面をプレイヤーに想像させる。それを用いて日常をコミカルに描くのだから飽きが来ない。最初から最後までもキャラクターをかわいいと思わせるように、それでいてシナリオに安心感を抱かせるように、とどこまでも丁寧な作風です。

 さて、シナリオはというと、本作の主人公は受け身・・・現状を維持したい、そんな甘えが見えます。そもそも、プレイヤーが積極的な行動を選択肢し、主人公が積極的な行動をしても、痴漢と思われるようになってしまう可哀想さ。逆にヒロインは能動的ですね。どうやらシナリオの流れは積極的なヒロインが主人公を染め上げていく(この辺りは過去のトラウマにより、本を読んでいないと・・・仮想に逃避していないと安心できない故の主人公の読書癖が、最後はどのルートもなくなっていることからわかると思います)。積極的に逃げる主人公と積極的に迫るヒロインの構図を最後まで保つ・・・物語の主導を握るのはヒロインであり、物語の視点となるのは主人公というわけです。


 「今日もまた、寄り道だらけの活動が始まる―――」(---大図書館の羊飼い.STORY PAGE)


 本作は日常をメインとし、シナリオの展開は日常の味付けに過ぎないとしているほどのであるので、個別シナリオを個々には、ちと寸評しづらいのですが・・・。どのルートも描いていることは変わらなかったように思います。

 つぐみは妹のために学園を楽しくする・・・引っ込み思案である彼女が周囲に影響を与えていく過程を。御園は現在ではただ辛いだけの物になってしまった歌が楽しくなるまでを。玉藻は考え方が合理的であるが故に諦めていた絵描きを。佳奈は自身を無価値と表明しているため、主人公に認められる・・・恋愛をメインに。つまり、どのシナリオも、ヒロイン側の問題を主軸にし、夢へ一歩を踏み出そうとするヒロイン、もしくは夢への一歩が踏み出しづらかったヒロインと、受け身の主人公が能動的になり、それを助けるまでを描いていく。相互扶助という恋愛物で、素直なシナリオ展開をしてきますね。

 残る小太刀ですが、2週目以降でないと攻略できない辺り、彼女は扱いが別ですね。他のキャラクターのシナリオがあれだけ他のヒロイン、もしくはサブヒロインとの比較で性質を浮き彫りにしていたのに対し(玉藻は除く)、小太刀はそういった対照となるヒロインが居ない。じゃあ、比較対象は誰?って、考えると主人公その人ですね。


 「羊飼いに大切なことを、誰にも平等に・・・・・・裏を返せば、誰にも執着しないことだよ」(---大図書館の羊飼い.ナナイ)


 小太刀ルート・・・いや、他のTRUEに繋がるルートはその実、小太刀を選ぶのではなく、誰も選ばないからこそ、起こり得たシナリオ。羊飼いになれない小太刀と羊飼いになれる主人公。シナリオ的には小太刀が主人公に執着する・・・恋愛することで、羊飼いにならず、幸せになるというお話。羊飼いになることは、誰にも執着せず、永遠の時を生きる・・・人間を辞めることと同義。つまり、羊飼いになることは、この作品の中では、小太刀の幸せには繋がらないことを示しています。

 TRUEルートは、タイトルにもなる羊飼い関連のルートでもあり、羊飼いにならない話・・・個別とは別のシナリオでもあります。面白いのが、このTRUEルートは小太刀だけではなく、メインヒロイン全員分個々に用意してあり、最後まで誰一人欠けることなくシナリオを紡いでくる辺り・・・キャラ特化であるということを最後まで示している点です。


 最初の個別シナリオでは、全てのルートで小太刀が羊飼いにならないことが確認できない。小太刀は羊飼いになっているか、なろうとし続けている。そう考えると、最初の個別シナリオで終わってしまったとき、どのヒロインのルートであろうとも、小太刀のその後を考えてしまい、シコリが残ってしまうんですよね。けれども、どのヒロインのシナリオも描きたい。この両立を目指すために用意した二つのエンディング。TRUEとした理由は主人公の過去を明かす、だけだからではない。どのキャラクターも欠けることなくというのを、どのヒロインシナリオでも描くため。さらには、最後のエンディングムービーではサブキャラクターに渡るまで、その後を描く徹底ぶり。

 前作ユースティアがストーリーで魅せる作品であったのに対し、本作はあくまでも日常をメインとし、その中でシナリオはキャラクターを捨てない。どこまで行ってもキャラを大事にするという点では、前作ユースティアに比べて格段に上でしょうか。

 改めて、Augustは色々出来るよな、と思わされた一作です。


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