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『相州戦神館學園 八命陣』 レビュー。

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 設定、世界観、ストーリー考察については、ぼくなんかよりも遥かに優れたまとめをしている方々がいらっしゃると思いますので、その辺りは置いておいて、ここでは簡単な感想を(これを書き終わったおかげで、ようやっと考察巡りができます。とはいえ、atwikiが死んでいるらしいので、どうしたものか)。

※ネタバレ注意

 本作「相州戦神館學園 八命陣」は、膨大な設定と硬派な世界観、そこで巻き起こるバトルを描く、いわゆる「燃えゲー」です。その膨大な世界観設定、それを説明する硬質なテキストから、設定を読む楽しさが売りの一つでしょうか。豊富なムービーやグラフィックス、これらを用いた演出は、このメーカーに敵うメーカーが、どれほどいるのだろうかと不安になるほど。キャラクターデザインは主流とはかけ離れているように思えますが、硬派な作風によく合っています。これだけ膨大な世界観設定をエンターテイメントに仕上げ、伏線などの回収をきっちりしている辺りは、さすがと言ったところ。このライターさんは…というか、このメーカーさんは、こういった燃えゲーを作るのには慣れていますね。プレイしていて非常に安心感がありました。

 システムは挙動がちと鈍い(まぁ、これはぼくのPC環境のせいかもしれませんので、何とも言えませんが・・・それでも、システムはメーカー名を体現してもらいたいものです)こと、ビジュアルノベル時のウィンドウの色を変更出来ない、周回前提の作りの割にスキップが遅いなど、難点は多少ありますが、必要な物は揃っており、そこまで気になるものではないかなと。

 進行はオーソドックスなAVG形式と、昨今では珍しいビジュアルノベル形式に切り替えて行います。AVG形式だけでは、説明しきれなかったのか?と思わせられるほど、膨大な世界観設定やキャラクター設定、戦闘描写をビジュアルノベル形式で描き、コミカルな掛け合いの場面ではAVG形式を用いるなど、AVG形式とビジュアルノベル形式・・・要所での使い分けが上手いですね。

 本作のテキストは地の文が多く、心情、キャラクターの性質を全部説明してくれるので、キャラクターの行動が分かりやすい。ちと説明臭くなりがちではありますが、要所でコミカルに描いているので、読んでいて飽きない。反面、行動や心情を細く説明しすぎて、キャラクターの行動から、心情を読み取る、もしくは想像するなどの楽しみは、あまりないと言って良いと思います。

 物語の舞台は夢の世界。登場人物全員が夢を共有し、夢の中だからこその特異な能力を行使したバトルを描く。物語は結局、最初から終章まで、夢の世界での話であり、終章で現実に戻り、ようやくスタートラインに立つ。スタートラインに至るため、何度も繰り返しを行うので、物語の流れとしてはループ物ですかね。ループ物とはいえ、毎回、敵キャラクターは異なり、バトル、シナリオ展開も異なるため、単純に飽きない。しかも、そのバトルにはきっちり意味合い付ける。構成の上手さもあります。

 仁義八行とは何か。

 この主人公、結構しつこいまでに、これについて語ります。どうやら物語自体はそれを強める方向に紡がれる。そのために、敵味方、サブキャラに至るまで、キャラクター設定を使い切るがごとき細かさを見せ、敵キャラクターと味方キャラクターを対比した戦闘を描く。キャラクターごとの性質をパラメーター化しているのだって、そのためではないか、と思えるほど。特異な設定はあるものの描きたかったものは、最初から最後までぶれなかったように思えます。

 そうですね、例えば、人を殺すことに嫌悪感を持たない・・・実感として人殺しが悪いと思えない鈴子は、人を殺すことを何とも思わない獣となったキーラを打倒する・・・実感は湧かなくとも、社会の規範は守らねばならないということを示していくことになる。

 このように、戦闘シーンと敵味方双方のキャラクターの性質を噛み合わせ、性質を浮き彫りにしていくのが良くわかると思います。それは他のキャラクターも変わりませんね。
 
 自らの思いによって、自らの重力を増加させる能力を持つ敦士は、仲間を守れなかった宗冬・・・周囲の質量を著しく軽減させる夢に打ち勝つことで、仲間の重さを背負い、その重さを体現してみせる。

 晶の能力は“求めに応じた分を回復させる”・・・この回復対象は敵ですら、その例に漏れない。それは自分以外の他人を認めようとしない聖十郎との対決シーンにより、彼女が誰であろうと隔たりなく対等に接することを浮き彫りにする。

 自ら作り上げた虚構の自分に嵌ったまま、一歩も動けなくなっていた歩美は、何物にもとらわれない狩摩を通して、囚われない心・・・探究心を学び。その大切さは「我を鎮める未来を早く見せろ」と咆哮する空亡と対決することで露わになっていく。

 対空亡戦で、性質が浮き彫りになるのは歩美だけではないですね。栄光もそう。忠義を示さねば倒せない空亡に対し、栄光は最も大切な物・・・最愛の人との関係全て・・・を捧げる。自らの命以上に野枝を愛し、それを投げ打ってまでして、ようやっと発現する彼の急段が神である空亡に届く。これがどれほどの忠義であるのかは言うまでもない。

 過去に弟を信じることが出来ず、それが結果として弟を殺してしまったと後悔する水希は、そこを突いてくる悪魔に、信明の強さと、自分の胸にある想いを同時に信じ抜く・・・誠実さを見せることで、悪魔を打ち破る。

 敵から味方に渡るまで、キャラクター設定を無駄にしない。しかも、それがラストシーンで活きるのだから、気合の入れようもわかるという物です。

 最後の敵たる甘粕の用いる攻撃は、近代兵器、もしくは宗教でいうところの神。主人公はそれに対し、上述の仲間たちの力を用い、最後はその身で打ち破る。甘粕の用いる神は民衆支配の道具として機能していた時代がある・・・また、甘粕自身も神は道具にすぎないと思っている・・・ことを考えると、最終戦闘は、最高峰の科学技術、もしくは支配の道具を、これまでの戦闘で証明された仲間の力を用いた四四八が打ち破る構図となっている。つまり、大切なのは知識、技術ではなく、何よりも“人としての心”であるということを示すわけです。これを描くために、この作品はこれだけの設定を用い、そして、その設定を漏らさず活かす。そういった意味で、この作品はキャラクターを無駄にしなかった。

 そういった細やかさはこの作品のENDからも見て取れますね。

 水希だけは大正時代・・・つまりは、現実で結ばれる唯一のヒロイン。ヒロインの中で唯一夢の中で結ばれることがなかった彼女・・・そういった他のヒロインが気にするしがらみがないヒロインであるからこそ、彼女は現実でも結ばれることができる。また、未来でのENDでは水希だけ、他のヒロインと扱いが違う。他のヒロインには、主人公から告白していたのに対し、水希の方が能動的であり、主人公が受け身。この対比をもって、水希は今までに悩んでいたものとは関係がないことがわかる。

 この細やかさが物語に一貫性を与え、だからこそ、読後の良さを奏でる・・・そんな作品ですかね。

 惜しむらくは、味方側に肩入れするあまり、敵側の描写が少なく、敵側に説得力を感じなかったこと。このライターさんなら、おそらくはもっと掘り下げて書けたのではないかと思うと、ちょっと残念でした。


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